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八幡浜簡易裁判所 昭和26年(ハ)2号 判決

原告 八幡浜信用組合

被告 広田勇

一、主  文

被告は原告に対し金拾弐万円及之に対する昭和二十五年五月十日から同年十一月五日迄は金百円につき一日金二銭二厘同年十一月六日から支払済に至る迄は金百円につき一日金五銭の割合に依る金員を支払わねばならない。

訴訟費用は被告の負担とする。

この判決は原告に於て金四万円の担保を供託するときは仮に執行することができる。

二、事  実

原告訴訟代理人は、主文第一、二項同旨の判決竝に担保を条件とする仮執行の宣告を求める旨申立て其請求原因として、原告は中小企業協同組合法により設立された組合であつて預金貸金等の信用業務を営むもの、被告はその組合員であるが原告は被告に対し昭和二十五年二月十日金拾弐万円を次のような条件で貸付けた。この貸付は八幡浜商工会金融互助会規約に基くもので、同会の骨子は

(1)  一組十二人で各組員は原告に対し一ケ年満期の月掛定期積金を契約する。(2)  組員は毎月入札又は抽籖によつて原告から資金借入の順位を獲得する。(3)  右順位者に対し原告第一号積金を見返りに定期積金契約額に相当する金額を定期積金の満期となる日迄融資を継続する。(4)  融資を受ける順位を獲得した者は互助会に対し二名以上の保証人を立てる。その信用関係をも条件として原告は順位者に融資する。

そこで被告は右金融互助会の昭和二十四年十一月十八日結成された第二十八組の組員で金拾弐万円の定期積金を契約し同年十二月から昭和二十五年十一月五日迄毎月一回金九千八百四十円の預金をなす義務を負い、その三回目まで積金を為し、その四回目に資金借入順位を得たものである。よつて互助会組員の同意により契約定期金額に相当する金拾弐万円を昭和二十五年二月十日原告から貸与したもので、その支払期は同年十一月五日である。この貸付には支払の手段として約束手形を差入れる取扱であり、更改する手形の期間を三ケ月とし、被告は支払期日同年五月十日の約束手形を差入れ、原告はそれまでの金利は約定により金百円につき日歩二銭二厘の割合で支払を受けている。然るに被告は原告の右融資の一部を訴外中井豊勝に融通し、その回收困難となつた為原告に対する定期積金の月掛を昭和二十五年四月分から履行せず、同年五月十日に書換差入るべき約束手形の差入をも為さず、定期積金の満期も同年十一月五日に到来したが四ケ月分が積まれた丈で後掛込を為さず、依つて合意管轄裁判所たる八幡浜簡易裁判所へ本訴に及ぶと述べた。<立証省略>

被告訴訟代理人は、原告の請求を棄却する、訴訟費用は原告の負担とする、との判決を求め答弁として、原告が中小企業協同組合法により設立された組合であつて預金貸金等の信用業務を営むものであること、被告が八幡浜金融互助会の組員であること、被告が該互助会の第二十八組第四番で権利者となつたことは認めるが其他の原告主張事実は否認する。被告は原告の組合員でもなく、原告から主張のような金員の融資を受けたこともないから原告の請求は理由がない。仮に金融を受けたとしても本件契約は無尽業法に反する脱法行為であるから無効である。即ち互助会の金員貸付の方法は一組を十二口、一口の掛込金額を九千八百四十円とし、毎月一回定時に集会し一定金額を掛込ましめ一口毎に競争入札によつて最高割戻額入札者を定めて落札者を決定し、尚落札者に其の際持寄つた掛込金を給付する。但し最後迄落札せずして残つた者は満了の際当然一定の金額を受領する定であり、従て右の金融方法の実質は無尽業法の無尽である。それ故この事業を営むものは会社たることを要し、主務大臣の免許を要するに拘らず原告は所定の手続をとつていないものであるから明に右は脱法行為である。と述べた。<立証省略>

三、理  由

原告が中小企業協同組合法により設立された組合で、預金貸金等の信用業務を行うものであることは当事者間争のないところである。依て先づ原告組合が主張する金員貸付方法並に其貸付幹旋機関の八幡浜商工金融互助会(以下単に互助会と称す)の組織及原告組合が、其主張の如く被告に対し金拾弐万円を貸付けた事実の有無につき検討するに甲第一号証(互助会規則)に依れば互助会は生業資金の融通を目的として(規則第二条)、八幡浜市在住の中小工業者を以て組織し(同第四条)、其目的達成の為原告組合から資金の借入を幹旋するもので(同第六条)、右会員は原告組合取扱の一ケ年満期定期積金一口以上を有することを要し(同第八条)、資金借入幹旋方法として同会は十二口を以て一組とし(同第五条)、定期積金掛込金を毎月会開の際持参し(同第十四条)、入札若は抽籖の方法で資金借入の順位を決定し(同第十五条)、資金借入決定者は定期積金未払掛込金分につき借入金を確実に掛込金を継続する旨の念書を二名以上の連帶保証人を立てて同会に差入れ(同第十七条)、役員として会長一名其他を置き(第二十条)、其他に運営委員若干名を置いて其目的達成に当らしめ(同第二十一条)、更に会員は各組毎に連署を以て各自契約の定期積金掛込金を各組の借入金に対する担保に供する旨の差入証を原告組合に提出すること(同第二十三条)、を規定せること明にして被告が右互助会の会員で第二十八組の組員であつたことは被告の認めるところであり、この事実と証人武井一男の証言の一部、同中井豊勝の証言、被告本人訊問の結果の一部並に署名捺印及金額の点は争なく、其他は武井証人証言に依つて成立を認め得る甲第二、第三号証、成立に争のない甲第五号証を綜合すれば、被告は昭和二十四年十一月十八日結成された互助会第二十八組の組員で、金拾弐万円の定期積金契約を原告組合との間に締結して前記規約に基き同日同組員と共に原告組合に対し将来借入るべき借入金に対する各自の積金を共同担保とする旨の承諾書を差入れ(甲第五号証)積金をしてきたところ、訴外中井豊勝から金融の依頼を受けたので右第四番会の借入金を同人に用立てることにし、昭和二十五年二月初旬右中井と原告組合に同道し互助会に対する被告の権利を中井に譲渡方の承諾を求めたけれども互助会組員の承諾を得ることができなかつたので、被告に於て該入札をしたけれども最高順位者となり得ず、組員の承諾を得て最高順位者坪井から該権利を譲受け、原告組合の事務員武井一男から互助会及信用組合に差入れるべき保証書手形用紙、担保差入書用紙(甲第二、第三、第四号証の用紙)を受取つて之に主債務者又は手形振出人として被告自ら之に各署名捺印して之を中井に交付して原告組合から金員受取を委任し、同時に連帶保証人の人選は中井に一任した結果中井は自己及浜本国太郎外二名を連帶保証人とし、同年二月十日原告組合から約定積金の貸与方を求めたところ、先に被告が約束した連帶保証人と異るところから組員から異議が出たけれども、結局被告に貸与するものなれば被告に於て承諾の上のことなれば差支ないことに決り、前記武井から被告に之を問合せたところ、組員で異議なければ貸与して呉れとのことであつたので諸経費を控除して金九万円余を中井に交付したこと及中井はこの金員を即日被告方に持参して被告から同人が既に払込んだ三回分の積金を三万円と計算し、更に前記坪井からの権利譲受代金名義千五百円被告からの中井に対する権利譲渡代金名義で千五百円を控除して金六万円足らずの金員を借受けた事実を認めるに十分である。右認定に反する証人武井一男の証言部分及被告本人の供述部分は採用出来ず、証人前上円太郎同木村仁一郎の各証言は前認定を左右する資料となすに足らない。

被告は仮に原告組合から前記約定金十弐万円を借受けたとしても原告組合の右貸付は無尽業法違反の脱法行為であるから無効である旨抗弁するので、此の点につき検討する。

一般に無尽の形態は、営業無尽及び之に類似の例えば建築業者が自ら注文者を募集して毎期の当籖者に住宅を提供するもの並無尽講の三種に分類することができ、従て無尽と云えば一定の口数を定め一定の時期毎に入札又は抽籖の方法で総ての口数に順次に利益を給付する一種の無名契約と解すべきところ、無尽講のうちにも成立の態様からすれば組合相互間の融通を目的とするものと特定人の融通を目的とするものもあり、実際上は更に雑然たる態様を為し、それが何れの範疇に該当するかは無尽の実際について之を判断するの外ないのであるが、本件に於ける互助会の金融方法は前認定のように生産資金融通を共同目的とする組合相互間に結合を持つ組合類似の互助会なる団体が中心となり、原告組合から資金借入の幹旋方法として一組を十二口に分け入札又は抽籖の方法で借入順位者及落札者を決定して総ての口数に順次利益を給付するもので、実質的に見れば右は前説説示の親無し無尽に類似する一種の無尽講の範疇に属するものと云い得るけれども、原告組合は互助会の申入れにより右決定者に対し総組員の定期積金を共同担保と為すに過ぎず、その運営を為すものは互助会そのものであるから、原告組合は無尽会社のように主体となつて加入者を募集し之と個別的に契約をして無尽をして無尽の運営を為す営業無尽を営むものとはいい得ないので、被告の脱法行為の抗弁は採用しない。

而して被告が前認定の通り原告組合に定期積金の預金を有する以上原告組合が被告に金員を貸付け得ることは中小企業協同組合法第七十六条第二項第五号に照し明であるから、被告は原告組合に対し前記貸付金十弐万円及原告に於て支払のあつたと自陳する分を控除した昭和二十五年五月十日から証人武井一男の証言により認め得べき最終期日たる同年十一月五日迄百円につき一日金二銭二厘期限後たる同年十一月六日から支払まで百円につき一日金五銭の約定損害金を支払わねばならない。

よつて、原告の本訴請求は全部正当と認め、民事訴訟法第八十九条第一項に則つて主文の通り判決する。

(裁判官 伊東甲子一)

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